イノベーション講座 CASE1 / CASE2

先端テクノロジーとデザインの融合による社会変革の可能性が高いモビリティ分野を主な例に、2日間にわたって第一線で活躍する方々を講師に招き、企業の「強み」と社会を変えるデザインについて考えました。


2019年11月20日(水)開催




CASE1 モビリティデザインもモノ+コトへ

モビリティジャーナリスト 森口 将之 Masayuki Moriguchi




新しいモビリティの誕生


 これまで日本社会は、移動の多くを自動車に依存してきました。しかし、高齢化により運転免許の自主返納者が増加。一方、多くの地方都市では公共交通機関が衰退しているという現状があります。さらに、地球温暖化による気候変動も問題となっています。


 21世紀に入り、これらの課題に対応するために、LRT、パーソナルモビリティ、カーシェア、ライドシェア、オンデマンド交通、MaaSなど新しいモビリティが生まれてきました。


 新しいモビリティが目指すのは、単なる移動だけではありません。商品が家の前までやってくる移動コンビニ、調理ロボが出来たてを届けるフードデリバリー、移動中に診察前診断を受けられる病院シャトルなど、現代社会の持つ課題を解決するためのモビリティサービスが考えられています。モビリティとは、人間の移動可能性のことを指す言葉で、主語は人間。だからこそ、サービス(コト)も含めて整えていくことが、モビリティの活用につながるのです。




MaaSとは

 

 新しいモビリティを語るうえで欠かすことのできないのが、MaaSです。

 

 MaaSとは、多種類の交通サービスを需要に応じて1つの移動サービスに統合すること。MaaSにより、公共交通や新しいモビリティなど複数の移動手段を、ICTを活用することで一本につないで案内することができます。

 経路検索に加え、事前決済、定額制とすることがMaaSの目指す一つの形で、日本では2019年6月、国の「スマートモビリティチャレンジ」支援対象として28地域・事業が選定され、各地で事業開発が進んでいます。地方は交通事業者数が少なく、補助金による自治体の関与もあるため、自治体主導で統合しやすいので、MaaSは地方のほうが向いているといえるでしょう。


 しかし、モビリティの利用促進には、アナログなサービスも重要です。富山県でも高齢者向けの優待チケットなどのサービスが好評を得ています。



それでもモノのかたちは大事

 

 これまでモビリティはものづくりの象徴とも言われ、ピラミッド型産業の代表でした。しかし、ものづくりで創意工夫を重ねても、移動問題は解決しきれませんでした。そこで近年はMaaSをはじめとするサービス(コト)に注目が集まりつつあります。


 けれども、私は「乗りたい」「行きたい」と感じさせるデザイン、ものづくりも、やっぱり欠かせないと思っています。これからは、モノとコトの融合が、素晴らしい移動を提供していくはずだと信じています。






CASE2 空の移動革命に向けた政府の取り組みと期待

経済産業省製造産業局「空飛ぶクルマプロジェクト」コミュニティマネージャー 小菅 隆太 Ryuta Kosuge



モビリティ分野における大変革

 

 現在、経産省、国交省がチームを組み、モビリティ分野における大変革を見据えたプロジェクトを進めています。「各モビリティにおけるプレイヤーや制度の垣根がなくなり、陸海空の移動がシームレスにつながる社会が生まれ、顧客のニーズに合わせた多様なサービスが生まれる」ことを目指すもので、そのなかでキーとなるのが、空飛ぶクルマです。


 空飛ぶクルマとは何かという話をする際、我々は、「電動」「自動」「垂直離着陸」の3つの視点に重きを置いています。これら3点を押さえたモビリティを、空飛ぶクルマの定義としているのです。


 空飛ぶクルマが航空機やヘリコプターと大きく異なる点は、電動であることです。電動化により、少ない部品での開発が可能で、ヘリコプターのような騒音もなく、環境負荷も少ない。すでに操縦士がいない自動運転が実装されていることを想定して議論を進めています。さらに垂直離着陸という点も重要です。「点から点へ」移動することができれば、陸のインフラに制約されることなく移動ができるようになります。



空飛ぶクルマが解決する社会問題

 

 空飛ぶクルマの利用シーンは都市部、地方部、両方を見据えています。


 2050年には人口の約7割が集中すると想定される都市部においては、渋滞解消、生産性向上を目指します。地方部では「点から点へ」の移動により、陸でのインフラ費用を削減します。その他、物流、災害時のドクターヘリとして、あるいは娯楽・観光での活用も踏まえて議論がなされています。



世界はスピーディに実験している


 世界ではすでに実際の機体での実証実験が行われており、現在は騒音、飛行距離、搭載可能な重量などに関してしのぎを削っています。日本でも、ヘリを使って実験を行うなど積極的に仕掛けている地域や企業がありますが、政策・法整備などの課題を解決しなくてはさらなる実験に進むことが難しいのが現状です。技術開発、インフラ制度、担い手、社会受容性なども課題として残っています。



空の移動革命に向けた官民協議会


 2019年8月から開催された官民協議会は4回を重ね、ロードマップを作成しながら様々なアクションを検討してきました。各都道府県単位でも事業者や地域のネットワーキングが生まれています。空の移動革命に向け、キーとなるのは2023年の「空飛ぶクルマ事業スタート」。


 今はまだ空論ですが、未来は意外と早くやってきます。さまざまなステークホルダーと連携しつつ2023年に向けて議論を進めていきたいと思っています。



DISCUSSION

モビリティジャーナリスト 森口 将之

経済産業省製造産業局「空飛ぶクルマプロジェクト」コミュニティマネージャー 小菅 隆太 

モデレーター / 富山県総合デザインセンターデザインディレクター 岡 雄一郎




新しい「道」の使い方


ー 岡:空飛ぶクルマでの移動が増えると、陸移動は減るのでしょうか

小菅:試算では陸の移動が減ると言われていますが、空飛ぶクルマが陸路の代替手段になるかというと、わかりません。現状の不便さを改善するというよりは、新しいものを生み出すクリエイティビティです。

岡:陸での移動が減ると、いろんな道の使い方ができるようになるのでは。

小菅:道の安全性が高まり、道と人と建物の関係が良くなると考えられます。

森口:パリでは高速道路に蓋をし、その上を公園として活用している例もあります。


高岡らしいモビリティ


森口:新しいモビリティは地方が脚光をあびる起爆剤だと思います。

岡:富山県内でも高岡市は駅前が空洞化し、ショッピングセンターが街の中心になっています。高岡らしいモビリティはショッピングセンター内の移動、ショッピングセンターと家の間の移動などがあり得るのではないでしょうか。

森口:イギリスでは小型モビリティが高齢者、障害者などのショッピングセンター内と周辺エリアの乗り換えを担う移動手段「ショップモビリティ」として確立している例があります。

小菅:民間では、某自動車会社などが、実際に道路指定管理者である基礎自治体や住民と連携し、相乗り式低速モビリティを実走させてみようという試みなどもあります。そこでは、住民とどういう乗り物なら乗ってみたいか、乗ることでコミュニケーションが生まれるかなど、実走実験を通じて対話・協働し、人と人をつなぐモビリティを模索しています。「コミュニティ」と「乗り物」は密接に関係しているといえますね。

岡:自動運転も大事だけれど、特に高齢化社会では、そこでコミュニケーションが生まれるモビリティというのも必要ではないでしょうか。富山県は雪が降るとどうしても車での移動が中心になってしまうのでショッピングセンターの中でのコミュニケーションの可能性があると思います。



森口 将之  モビリティジャーナリスト/モビリシティ代表取締役


1962 年東京都生まれ。早稲田大学卒業。国内外のモビリティ最新技術やサービスを取材し、テレビ、ラジオ、インターネット、雑誌などで発表。2011 年には株式会社モビリシティを設立し、モビリティやまちづくりについてのリサーチ、コンサルティング、セミナーも担当。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。著書に「富山から拡がる交通革命」「これから始まる自動運転社会はどうなる!?」「MaaS 入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略」など。


小菅 隆太 経済産業省製造産業局「空飛ぶクルマプロジェクト」コミュニティマネージャー


1975年生。DeNA等を経て2010年広報PRコンサルタントとして独立。ビジネス、ソーシャル、公共のトライセクターで活躍するプロジェクトマネージャー。経済産業省製造産業局「空飛ぶクルマプロジェクト」では、週一官僚としてコミュニティマネージャー職に従事。専門領域はソーシャルデザインやコミュニティデザイン。「社会の課題に、市民の創造力を。」issue+design所属/「SDGs de 地方創生(GOOD DESIGN AWARD 2019 BEST 100受賞)」ディレクター/シーライン東京PR顧問/群馬県嬬恋村観光大使/「妻というもっとも身近な赤の他人を大切にする人が増えると、世界はちょっぴり豊かで平和になるかもしれないね」日本愛妻家協会 事務局長代理、など様々な顔を持つ。



#イノベーション講座

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TEL 0766-62-0510(平日 9:00〜17:00)
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主催:富山県

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