問合せ先:富山県総合デザインセンター
TEL 0766-62-0510(平日 9:00〜17:00)
www.toyamadesign.jp
有限会社エピファニーワークス(事業受託者)
TEL 0766-54-6210

主催:富山県

※個人情報の取り扱いについて:申込者の個人情報は、富山県(以下、主催者)が適切に管理し、本事業の実施運営に関わる作業ならびに主催者からのその他イベント告知等のお知らせのみを目的として使用いたします。個人情報は、契約に基づく委託先を別として第三者には提供いたしません。

イノベーション講座 CASE3 / CASE4

先端テクノロジーとデザインの融合による社会変革の可能性が高いモビリティ分野を主な例に、2日間にわたって第一線で活躍する方々を講師に招き、企業の「強み」と社会を変えるデザインについて考えました。


2019年11月21日(木)開催


CASE3 暮らしに寄り添うクルマづくり

ダイハツ工業 カーデザイナー 青山 尚史 Naofumi Aoyama





ダイハツブランド


 2016年、ダイハツ工業株式会社はトヨタ自動車の完全子会社となりました。「安定だね」と言われることもありますが、僕自身はブランド存続に危機意識を抱いたんです。そしてこのことは、ダイハツのブランドとは何かを深く考えるきっかけになります。


 ダイハツは、1907年に立ち上がった日本最古の自動車メーカーです。歴史も深く、過去の先輩に学ぶものが多くあります。

 

 ダイハツといえばミゼット。日本人の生活にあったサイズ感で、必要最低限の装備なので安くて軽い。修理がしやすいため日本のみならずアジアの人の足として長く愛されました。そして、調べてみるとこのミゼットの遺伝子は、現行商品であるハイゼットという軽トラックに脈々と受け継がれていることがわかったんです。ダイハツのブランド力は軽トラック。僕はそう考え、軽トラックの開発に取り掛かることにしました。



現地調査


 まずは現地調査からはじめます。本当の現場を知るため、開発メンバー3名に、農林漁業の産地3箇所に分かれて1ヶ月間の住み込みで調査をしてもらいました。農業の調査に入ったメンバーはホテルに住む予定だったんですが、より現場に近い暮らしを求めて月5千円の古民家を借り、ムカデやコウモリとともに生活することになりました。


 農林漁業すべてにおいて、実際に調査するまでわからなかったことばかりで、反省することが本当に多くありました。デザイナーとしてはかっこいいと思って作ってきたものが、使いづらさを招いていることもあり、スタイリングとデザインの違いを痛感しました。



TsumuTsumuの開発

 

 現地調査で得たことは多くありましたが、その複雑な要件すべてをカバーしようとすると、1台のコストがとても上がってしまいます。そこで、課題の共通部分を磨き上げよう、と開発したのが、TsumuTsumuです。

 

 要点は3つ。1つ目は、乗り降りしやすい工夫。2つ目は、共通項以外の部分のカスタマイズを充実させること。3つ目はキャビンの中の使用性。足もとが掃き出し構造になっていて掃除がしやすい。そのほか細かい部分も含め、現場で得たことをTsumuTsumuにできるだけ反映しています。





コトの拡がり


 これからはハードだけでは世の中が変わっていかない時代です。TsumuTsumuの開発とともに僕らが取り組んでいるのがドローンを使って農業支援を行うビジネスで、2020年から一部地域で運用を開始予定。軽トラにドローンを置き、育成診断、農薬散布などのサービスを担います。大企業も農業支援を行っていますが、ダイハツは小規模、個人単位で使えるサービスを作っていきたいと考えています。


 農家の方は、楽をしたいとか、綺麗にしたいとかよりも、良いお米を作りたい、美味しいお米を作りたい届けたいという思いが強いんです。ある梅農家さんは出荷するとき、荷台に積んだ梅に毛布をかぶせるんですが、雨が降るわけでもないのになぜかと聞くと「自分たちにとっていちばん大切なものの嫁入りだ」と答えてくれました。一方で、自分たちの作ったカタログを見ると、売り文句は「燃費が良い」だとか「楽できる」とかそんなことばかり。昔のミゼットのカタログには「大切に届けられます」と書いてあります。


 車のデザインを考えてスタートしたプロジェクトでしたが、最終的には測量し農薬散布するところまで拡張しました。けれども、地方に入りこみ、ものの本質、軽トラックがどうあるべきかということを、強く学んだように思います。




CASE4 Meaning Driven Design

プロダクトデザイナー 坪井 浩尚 Kosyo Tsuboi




世の中の指数関数的な変化

 

 AIの権威レイ・カーツウェルは、今後、デザインや産業は指数関数的に発展していくだろうと考えています。これまでの10年間の変化は過去10年間の2倍ではなく、より指数関数的に早くなり、2020年はコンピュータが人間を超え、2045年には人間の労働のパイは8割から9割奪われるともいっています。サラリーマンという職業がなくなり、すべての製造業は3Dプリンタに置き換わる。数年のうちにすべての企業がIT企業になり、業種の区別がなくなるのではないかとも語っているのです。


 僕自身、懐疑的な部分もあるが、本当になるかどうかは別として、傾向としては必ずそういう流れになっていくだろうとも思っています。では、その時代にデザインという手法はどう変化するのでしょうか。



Meaning Driven Design

 

 例えば一般的なマーケティングは、今年ヒットしている商品やライバル社の商品を検討して、その次の年はどういう商品を作ろうか考えます。一方Googleなどは、10年、20年後この世の中がどうなっているかをまず考える。そこから逆算して、では来年に落とし込むにはどういうサービス、プロダクトを作るべきかということを考えるのです。このバックカリキュレーション、逆算的に考えるということは、革命的なプロダクトを生み出す上では非常に重要で、将来的にどうなっていくかわかっていると、予定調和ではないものが生み出せるのではないでしょうか。


 僕が携わっている業界は、インダストリアルデザ イン、プロダクトデザインという業界ですが、デザインにおいてこれからの時代は、スタイリングビジュアリゼーション=形にする、具現化するという力だ けではなく、VISION TELLER(ビジョンテラー:将来 を見渡す力。坪井さんの造語)という力が必要にな ってくるのではないかと考えています。


 僕は、このことを総称して「Meaning Driven Design」と呼んでいます。


 Meaningは「意味」、Drivenは車を走らせるといった意味の「ドライブ」。つまり「意味から走らせるデザイン」です。一般的にプロダクトデザインというと、アウトサーフェイスデザイン(外観意匠)を指すように言われがちですが、僕は意味からデザインを考えるということ、意味からデザインを走らせるということが将来的に重要になってくると思い、実践しています。



意味が先行するデザイン


 以前、「The Mirror of Truth」という鏡のデザインをしました。「鏡のデザインをしてください」と言われると、多くの人は意匠的なことを設計しますが、僕がここでデザインしたのは、非常にシンプルなこと。この鏡は、普通の鏡と反対に映るんです。


 鏡というのは、そもそも何をする道具でしょう。人は、他人に自分がどのように見られているかということを 確認するため鏡の前に立ちます。けれども普通の鏡では、例えば僕が右手をあげると鏡の中の僕は左手をあげる。つまり、普通の鏡には、人が見ているのと は反対の像が映っているのです。


 そこで僕は、人に見えている本当の自分が映る鏡、「真実の鏡」を作りました。これは電気を使ってモニターに画像を映しているわけでは なく、光学設計によって実現したものです。




 そのほか、「紙がインターネットにつながる世界」を目指し、見た目も質感も紙なのに、画像の切り替えや、映像も流せる魔法のようなディスプレイ 「MAGIC CALENDAR」なども開発しています。



デザイナーの力=夢を見る力


 大学生時代、講演で聞いたSONYの出井さんの言葉があります。

「デザイナーの力=夢を見る力だ。どれだけ、こんな世の中ができたらいいな、ということを信じられるかどうか。これを信じる力、夢を見る力こそデザイナーの力だ」。


これからの時代、この夢を見る力が、とても必要になってくるのではないでしょうか。




CONFERENCE

県内のものづくりリーディング企業の方も招き、講師を囲んでオープンイノベーションやものづくりとデザインの今後のあり方を探りました。

 GUEST:

 IAAZAJホールディングス代表取締役 小田 浩史

 (株)能作 商品開発担当 竹内 邦子

 モデレーター:桐山登士樹


日本の企業のこれから


青山:坪井さんの話を聞いて、忘れていたものがあったと実感しました。生活を快適に、という一方で、夢を見るというのがすごく大事。心に響きました。

桐山:坪井さんの講演で日本のメーカーの話が出てこないのが気になります。開発力がないのでしょうか?

坪井:開発力は強いが、変化に弱い印象があります。インダストリアルデザインにも様々な領域がありますが、変化が激しい新領域では、まだまだアメリカや中国に分があります。未来をより良いものに変えるための「0 から1」を創る事への興味に差を感じる時もあります。

青山:僕もまさに日本の企業に危機意識を持っており、日本の自動車メーカー8社のインハウスデザイナーを集めた組織、JAID(Japan Automotive Interior Design)を作りました。メンバーが打ち解けるため、まずは3 年間ずっと飲み会を開催して、やっと、今年の1月に合同展示をすることができました。会社を辞めるか迷ったこともあったんですが、大企業の役割もあると思っています。中小企業やベンチャーが取り組んでいる新しいことをトライする場所が、僕らのプロ ジェクトということもあります。企業が育てないといけない産業もあると思うし、そういう資源を大事にしています。


富山のものづくり


小田:富山の県民性として、「これを作って」と言われたら上手なんですが、「自由に自分のアイデアで作って」というのが苦手という面があります。かつて、面白い生地はアパレル事業から生まれていて、高付加価値で少量生産のアパレル事業の技術を改良しながら、安価で大量生産する産業資材へ展開するという流れでやってきました。しかし、その面白い生地をつくる状況が減ってしまい、自分たちでやるしかない、という発想になったんです。そうして立ち上げたのが自社ブランド『CanRuler』です。登山家の佐伯知彦さんという究極のユーザーと開発したアウトドアウェアです。

竹内:コアコンピタンスの話にもなりますが、能作の強みとしているのが、技術と素材です。うちだけではなく、高岡銅器の職人さんの技術はみな高いです。世の中のデザイナーよりも金属の特性を熟知しているのが私たち職人です。錫が柔らかい、抗菌効果がある、お酒との相性がよいという特性を生かして製品開発をやってました。医療分野に展開したきっかけは、金属というものに対して興味を持ってもらいたいということもありますが、お客さんに笑顔を、という思いがまずありました。

桐山:富山にはものづくりの技術の素地があり、デザイナーを入れることで徐々に実績もできてきています。今は次のフェーズに入っている段階。お互い触発しながら価値創造していかなくてはいけないと思います。日本の企業力を押し上げていくには、考え方や捉え方のロジックを変換する必要があるのではないでしょうか。

坪井:意味から物事を考えてみると、不思議と勝手に新しい価値が創出されています。当然、その意味を実現するためには様々なハードルがありますが、良い主題を見つけ、それを具現化することができれば、ただ最新の技術やテクノロジーを前提とした製品やサービスよりも、皆さんが望むものとなると思います。なぜなら、私たちが心から必要とする「意味」がそこに体現されているのだから。





青山 尚史  ダイハツ工業 カーデザイナー

愛知県生まれ。2002 年、名古屋市立大学芸術工学部を卒業。ドムスアカデミ ー サマーセッション修了後、2004年に名古屋市立大学大学院芸術工学研究科を卒業し、ダイハツ工業デザイン部に入社。2009年、デザインユニット 今人 imagine 設立。その後 Toyota Europe Design Development を経て、 2013年にダイハツ工業第一デザイン部に帰任。ミラノサローネサテリテ特別賞、East Design Show 銀賞など受賞。



坪井 浩尚 プロダクトデザイナー


静岡県出身。2004年多摩美術大学環境デザイン科卒業。大学卒業後曹洞宗大本山總持寺にて仏道修行を行う。2006年の作品発表を期に、2008年に現KOSHO TSUBOI DESIGNを設立。に禅の思想を背景に対象の環境を柔軟且つ鋭く読み解き、モノに独特の生命を吹き込むアプローチに定評があり、現在までインダストリアルデザインを中心に幅広い製品を手がけている。代表作にGoogle社のカレンダータイプの電子デバイス「 Magic Calendar」、中国スマートフォンメーカーMEIZU社のスピーカー「Gravity」、KDDI社の携帯電話「LIGHT POOL 」、Arflex社の椅子「Omega 」、プロダクトブランド100%への「Sakurasaku glass」等。国内外の受賞歴多数。2017年発表の「Magic Calendar」はGoogle社主催のコンペ「Google Android Experiments OBJECTS」でグランプリを受賞。Media Ambition Tokyo等で展示され好評を博した。紙がインターネットにつながる未来を具現化させるその画期的なアイデアは、海外メディアでも多数取り上げられ話題になった。



IAAZAJホールディングス株式会社


車輌・医療・アパレル分野の染色加工「第一編物」「エイゼット」、『ShirleyTemple』『TINKERBELL』ブランド企画販売「アートジョイ」「エムケー」、縫製・横編「エスティソーイング」「母袋産業社」「創和」8社のグループ会社からなる。ウェブサイト



株式会社能作


鋳物メーカー。仏具からテーブルウェア、ホームウェアなど、錫(すず)をはじめとするさまざまな金属製品の企画、開発、製造、販売を行う。近年は錫の抗菌性、曲がる特性を生かし医療機器を開発・製造している。ウェブサイト




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